絵筆

新しい
ぱりっとした絵筆が欲しかった
ほうっ!
ほうっ!
と吾郎助が泣く夜道を
一人で走るのが怖かったので
「ねえ、買って来ておくれよ」
地団太ふんで
母さんに買いに行かせた
ぱりっとした絵筆の想い出
絵筆よ絵筆よ
もう一度あの頃を描いておくれ
母さんと僕を
上手に描いておくれ

昭和三十九年六月作品

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