八戸の旅館にて

1998年8月

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木賃宿の図
 柴田理恵さんをきつくしたような女中さんが私を部屋に案内して、 お茶を注いで下さったのですが、なかなか部屋から出て行こうとされ ません。頬骨の尖ったいかつい顔に張り付いた、両端が跳ね上がった 眼鏡の奥から、鋭い眼でじっと私の顔を観察しています。こちらが 喋ったことには丁寧な言葉で応えられるのですが、自分からは何も喋 られません。  

 どう贔屓眼に見ても私にも選ぶ権利が有るし、シャワーも早く浴び たいしと、ひたすら早く出て行かれるようにと念じたら、ふっと顔をそら して「どうぞごゆっくりお過ごしください」と言って開放してくださいました。何故なのかどう考えても理解できなかったのですが、旅から帰って46才の独身男性社員に一人で宿泊したことを話してようやく理解でき ました。

  「最近、ビジネス以外で中年男が一人で泊まるのは凄く警戒される でしょ、リストラに遭ったサラリーマンや倒産した零細企業のおやじが 自殺しないかと旅館が物凄く神経質になっているのですよ」・・・へえ、 そうなのか・・・・我慢して言い寄らないで良かった。朝にJR三沢駅か ら予約した時、特別注文しておいた新鮮な蛸料理は、私の意図した ものとは随分かけ離れていました。  

 充分に説明しなかったのと、ビジネス旅館で料理旅館ではないと 言うことを確認していなかったのが原因なので、出されたものを有難 くいただくことにしました。三人しか泊まっていないようで、食事の部 屋に一人ずつのお膳が離して並べられています。他の二人は商談が 長引いているのか、最後まで一人で黙々と料理を平らげました。  柴田理恵さんとは違う女中さんがおつゆを運んできて「今電話が 入ったのですが、隣に料理を用意したお客さんは、魚貝類もお肉も 一切食べられないそうですよ。だからこの中で食べられるのはモズク と漬物だけなんです」と告げ口されます。

 面白そ〜来られたら少しゆさぶってあげようかな、などと考えて ゆっくりとお茶を飲みましたが誰も来ませんでした。 まだ時間が 早かったので本の続きを読もうかと思ったのですが、「意識と本質」 は中途半端によっぱらってゴロゴロしながらひろげるにはやや無理 が有るかなと思い、テレビをつけました。

 いきなりさんまさんが出てきて、家で見るのと同じ番組です。 3 時半にチェックインして晩飯までの時間にぶらついた本八戸のジャスコ前を、新京極で見るのと同じファッションで、標準語を喋りな がら歩いている若者達を見た時と同じショックを受けました。八戸でも さんまさんを見るのはあたりまえで、ショックを受ける方が視野が 狭いのでしょう。 それと言うのも、ルン・ルの会場となった東北牧 場が、あまりにも非日常的空間だったのが一番大きな要因です。

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