みちのく一人旅
東北ルン・ルレポート
1998年8月

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海と電車
  40数年前、小学2年生の時に母と10日間の東北旅行をしました。今から思うと、当時30代前半の母は再婚候補者の男性と会うため に旅行を計画したようです。相手の方は、役場の職員で優しそうな人 でしたが田舎臭いなと感じたことを覚えています。仕事があるので二 日間だけ同行されましたが、結果的にはそれっきりになりました。  

 東北ルンル終了後、一人で八戸の蕪島に行きました。記憶に残っているのは、荒涼とした岩山に無数の海ねこが舞い、近く には民家や人影は無く、騒々しくて寂しいそれはそれは東北的な風景 です。騒々しいと言うのはニャーニャー、ギャーギャーという海ねこの鳴 き声です。

  53年前、独り息子を背中におぶって中国東北部から朝鮮半島の突端 まで歩いた母が、夫の死を知らされたのは帰国後2年目、27才ぐらいの 時でした、その母も69才で光の世界に戻りました。ふとした感傷で、母 と優しそうなおじさんと三人で立った蕪島の海岸を見たくなったのです。  

 JR東日本八戸線鮫駅に着いて、一歩外に出た途端「なぬー」どうも イメージがちがうなー。家がたて込んだ町並みの間を通る県道を、車の 往来に気を付けながら少し歩くと、蕪島と八戸水産科学館の案内標識を 見つけました。目的地は500m程先にあるようです、そこに行けばあの 荒涼とした懐かしい風景に出会える。

  さすがに東北は日差しが強くても涼しいな、と思いながらひたすら歩き ました。途中でどうも妙な予感がし始めました、そしてようやくたどり着い たら「なんじゃこりゃー」タラ〜 全面コンクリート舗装された広場の先に 階段があって、登りつめた上にはやたら紅くてケバい神社がそびえ立っ ています。  

 鳥居も階段も通路もウンコと、それを製造した海ねこ(白いのと、汚い 茶色のがいました)だらけです。ホヤ、イクラ丼有りますというプレハブの 売店には、なぜかビニール傘が沢山売っています。駐車場には、「糞が 付くと洗ってもシミになりますので、傘をさして参拝してください」と看板が 立っています・・・ウーンなるほど!

 横に 広がる海岸は奇麗に整備された海水浴場で、脱衣所、シャワール ーム、トイレ、休憩所を兼ねた立派な建物がいかにも公金で賄いましたと 言う感じで建っています。茶髪、ピアスの高校生ぐらいの男の子達が、 フリチンになって前をバスタオルで押えながらキャーキャーと白いお尻を 見せて走り回っています。その200m程先には、とても格好の良い八戸 市営の水産科学館「マリエント」が真夏の太陽光線を浴びてキラキラと輝い ています。ここはモンゴルでもガダルカナルでもなく、1998年7月22日の 日本だと言うことを失念していたのです。そこで意識を切り替えて、今の蕪島を楽しむことにしました。

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