ルンルの会
能と脳
1999年12月

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能面画像
  「ホピの予言」の上映会が開催された日に、出かけるのもおっくうで一日ボーとテレビを見ていると、NHK教育で面白い番組がありました。 どこかの大学の大脳生理学か何かの教授が、能楽師の梅若なんとかさんと女優の樹木希林さんの胸と腹にセンサーを付けて、悲しみの表現をしている時の呼吸パターンを測定しました。二人とも普通の状態では、腹でゆっくりと規則正しい呼吸をしていて、胸呼吸は僅かです。悲しみモードに切り変わった途端、腹の呼吸は少なくなり浅く不規則な胸呼吸になります。次に中学生ぐらいの男の子にセンサーを付けて普段の呼吸を測定してみると、その殆どが浅い胸呼吸で、さらにテレビゲームをやらせてみると、もっと浅くせわしない胸呼吸になりました。学級崩壊やキレルという現象に、呼吸が何か関係しているのではないかと言う仮説を立てたのです。  

 深くゆっくりとした腹式呼吸をした時に、脳内にセラトニンと言う物質が出ていることが分かりました。そのことを検証するために、マウスの脳からセラトニンを取り除いてみることにしました。一匹の大形マウスが二つに仕切られた篭の片方に入れられていて、もう片方に小型のマウスが入れられます。仕切りを取り除くと、大きい方が小さい方の臭いをクンクンかいでから、すぐに何事もなかったように大人しくしています。次に手術で脳からセラトニンを取り除いて同じシチュエーションで実験しました。仕切りを取り除いてすぐは同じ様に臭いをかいでいましたが、突然大きい方が小さい方に噛みつきました。狂ったように襲いかかり殺意を感じさせます。さらに実験を完全なものにするために、同じマウスの脳にセラトニンを注入しました。結果は劇的で、あれほどたけり狂っていたのが嘘のように大人しいマウスに戻っています。

  次の実験は中学か高校の教室に行って、用紙一杯に印刷された数字を足していき、一定時間に何個できたかテストしました。たぶんクレペリン検査だと思いますが、その結果のサンプルを黒板に書いて、次に数分間ゆったりとした腹式呼吸を実施しました。
  違う数列の用紙で同じ検査をした結果は劇的でした。2倍、3倍、それ以上の成績を全員が出しました。攻撃性を押えると同時に、演算処理速度が極端にアップしたわけです。さらに番組は梅若さんの呼吸法の秘密を探っていきます。キリシタン大名、細川公を題材にした新作能等を意欲的に発表している、彼の驚くべき表現力はどのようにして生み出されたのかを解明しようと言う訳です。インタビューの中で、彼は(矢山氣功法とほぼ同じ)立禅を呼吸法と組み合せながら17年間毎日実施していると答えました。教授の前で立禅を始めた梅若さんは、みるみるうちに文武一道の達人高岡英夫さんの言うセンターが通った状態になり(だと思う)、明かに変性意識に入り始めます。  

 身体全体から力が抜けて行くのですが、顔の筋肉だけは硬直していきます。 ここまで見ていって、これはルン・ルではないかと気が付きました。「両手、両脚、おなかには温かい〜血液がゆったりと流れ、呼吸はますます深〜く静かになり、額には涼しい風がそよそよ〜、 そよそよ〜と・・・・・・・」まさにこれですね!!番組では変性意識には触れておらず、呼吸法だけに注目しています。かつてこの様な呼吸法は、優れた職人なら仕事中に誰でもやっていた事だと明言しています。
  様々な年代の呼吸を調べてみると、60才を境に腹式呼吸の比率が高くなると言う事です。 現代社会を構成する多くの世代が競争に追われ、浅い胸呼吸で攻撃したり、されたりしながら不安の中で、病気になったり仮面を付けたりするのでしょう。

  しかしこのような研究がテレビで放映されると言う事は、変化の胎動が始まっている証拠ですね。この放映のあと11月の京都ルンルがあり、脳内にセラトニンが出るどころのレベルではないことを思い知らされました。
  ルン・ル終了後、真摯に各種トレーニングを続けているYさんの近くにいた人達がルン・ル中にチプチと変な音がしていたと言いました。
  「ああ、あれはYさんの脳から出ている音です」と先生はサラリと答えました。 物心が付く前から芸の道に励んでいたプロが、17年の特別なトレーニングの結果たどり着いた状態が、ルンルでは入り口に過ぎないわけですから、奥が深いですね。
 ※腹式呼吸がベストではないことを、2015年の今は知っています。常識になっている健康法は、ほぼ全てがベストとは言えないし、中には有害なものが多々ありますので、テレビや新聞を通して医者や学者が言う事は鵜呑みにしない方が安全です。

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