ルンルの会
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1998年11月

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東安市場入り口」
東安市場内部
 北京のデパートで12年ぶりに、王府井大街にある北京市百貨大楼を覗きました。前回も秋で、北京最大のデパートと聞いてスシ詰めのバスに揺られながらショッピングに出かけたのを思い出します。今回は中国が始めての妻と、初乗り10.6元(159円)のタクシーで再訪問です。
  「リーペンがこんな所まで入ってきた」と国民服姿のニコニコ顔にとり囲まれてしまった話をしながら中に入りました。最初に感じたのは、相変わらず野暮ったくて、薄汚れていて、あの頃と何も変わっていないなと言う印象です。靴と絹の肌着が欲しかったのですが「ここは探す雰囲気と違うな、よそに行こか」と妻と意見が一致しました。地下鉄工事でひっくり返っている路を隔てて、東安市場という大きなマーケットがあります。 「ここ入ろか」と一歩足を踏みこんだ途端、目が点になってしまいました。  

 神戸のモザイクや、大阪の天保山マーケットプレイスよりも格好の良い空間がドーンと広がっているのです。ピアスを耳に付けたかっこいい男の子や、モデルのようにおしゃれをした女の子達がヒラヒラ歩き回り、いかにもやり手の青年経営者といった感じの男達が携帯電話を耳に当てて闊歩しています。中央は大きな吹抜けになっていて、一階毎のエスカレーターと、1階から3階へ直通のエスカレータ-が交差して幾何学的なアート空間ができています。吹抜けを囲んでおしゃれな専門店が無数に並んでいるのが一望できます。 ここは本当に中国??
  エスカレータで登って、最初に目に入った専門店の店先には日本円に換算して数10万円する毛皮のコートが無造作に吊り下げられています。 デパートゾーンの靴売場を覗きましたが、考えている予算に合う品物はありません。4千円から1万円近くするものばかりなので「やめようか」とお互いにうなずき合った途端に、25才ぐらいのスタイルの良い女店員さんに呼び止められました。

  妻が見ていた靴を手に、とにかく履いてみてはどうかと勧めます。予算に合わないのでと断わる言葉が分からず、試着用の椅子に座らされてしまいました。 たしかデパートでは値切れないはずなので、向こうが断るようにすればいいやと、たかをくくっていました。
  実のところ、二人の運動靴は大雨の天安門広場を歩いて靴下までグチュグチュになっていて、とても寒かったのです。妻が足にぴったりの靴を履かされて、さてどう断ろうかと思った途端に、女店員さんが電卓をポンポンと叩いて目の前にさし出しました。あれ!2割引になっている、それでも買う気が起こらないので脱ごうとすると、又電卓をポンポンと叩いて今度は3割引になっています。 こうなってくると予算に近付いてきました。結局3割5歩引き程で買うことに決めました。グチュグチュの運動靴を箱に入れて貰って、さて帰ろうかとすると今度は暖かくて、履き易そうな男物の靴を出してきます。 値段を見るとこれまた6千円近くします、あまり沢山中国元に両替してこなかったので手が出ません、と ころがいらないと言う度にポンポンと出される数字は限りなく下がっていきます。  

 これぐらいなら足りそうだと言う数字になったので、「我要」と言って財布を見ると帰りのタクシー代が少し不足します。少し気に入ってたので、あー残念と思いながら売場を離れました。15メートル程離れてから、ふと気が付いて胸ポケットに手を入れると100元札が2枚(日本円で3千円)が出てきました、分散して入れているのを忘れていたのです。「買うことが出来たな」と言いながら歩いていると、突然目の前に電卓がニューと突き出されました。なんと半額近い数字が打ち出されていて、彼女がニコニコ顔で立っています。暖かい靴に履き変えたのは言うまでもありません。店員どうしお喋りに夢中になっていて、商品を決めてもなかなか来てくれなかった前回の体験と、あまりの落差に感動を覚えてしまいました。今日本のデパートでこんなに熱心な販売スタッフがいるでしょうか。固定観念を捨てて、王府井通りを キョロキョロしながら歩いてみました。人民服姿は一人もいません、物凄くおしゃれなナイスミドルが次々と目に付きます。

  ケンタッキーフライドチキン、マクドナルド、コカコーラは既に街に溶け込んでいます。京都のラーメンチェーンの中でも最もアクが強い「天下一品」の北京店が通りの向こうに見えています。見慣れたトラックが走ってきたなと思うと佐川急便国際なんたらかんたら公司の文字が見えました。さっきのデパートにはワコールのコーナーもあったし。京都発の企業が北京で根を下ろしています。そして絹の下着という、もう一つの買物は出来ませんでした。国民性の違いか、日本でもかつてはそうだったのか、見えるところの贅沢品はふんだんに有るのですが、目立たない部分の品物はあまり多く見かけませんでした。しかしワコールが売れているのだから、単に絹の肌着がマイナーだという事かもしれません。  

 しかし、国際線のトイレと国内線のトイレの極端な落差を見る限りは、外面を優先的に整えているのだなと気付きます。関空から「はるか」に乗って駅に着く度に強く感じたのは、日本人は無表情で元気が無いなと言うことです。どちらがどうと比較する訳ではないのですが、欲しいものが一杯あって、夢中になって手に入れようとしている時、人の表情は生き生きするんだなと思いました。帰って日経新聞をみると、北京でオープンしてそれほど年数の経たない大形デパートが、次々に売りに出ているとの記事がシリーズで掲載されていました。

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